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■プロフィール
1986年早稲田大学卒業。その後、三菱銀行入行。横浜駅前支店、ニューヨーク支店、情報開発部に所属。1996年から2年間、ニューヨーク大学レオナルド・スターン経営大学院に留学する。留学後、経営コンサルティング会社のA.T.カーニーに入社し、M&Aを経験。2001年には株式会社グローバルダイニング最高財務責任者(CFO)に就任し、その後、同社取締役に就任。2002年には、ミフネ シアトルズベストコーヒー ウエストジャパン株式会社取締役CFOに就任。2003年、株式会社スイートガーデン取締役副社長に就任、のちに代表取締役副社長、代表取締役社長に就任する。現在は、コスモヘルス株式会社代表取締役に就任、現在に至る。


 電通でコピーライターになりたいとか、その頃走りだった経営コンサルティング会社に入りたいとか、将来をあまり真剣に考えていなかったのですが、どちらも実力不足で断念しました。バブル前夜で、当時就職と言えば金融機関というのりで、オファーのあった三菱銀行に入ることにしました。将来的に、僕はいちサラリーマンで終わるのは嫌で、経営者という職業に就きたいなと思っていました。銀行は人の財布の中身を見ながら勉強ができて好都合だし、MBAを取るには、都市銀行に入って社内留学という手段が手っとり早いのでは・・・とそんな邪なことも考えていました。 入行3年半後に移ったニューヨーク支店では、M&A、LBOファイナンスを2年間担当して、その後3年間は日系取引の中でも買収案件を多く担当しました。その過程で、世界で話題になった日本が買収した企業のファイナンスを勉強できました。1989年から1991年のアメリカ経済が傾いていた頃に、有名百貨店やスーパーマーケットをはじめ数多くのLBO案件を見ることができたので、とても貴重な経験でした。チャプター11やその後のバンクミーティング出席など、この時代に、欧米人の企業価値や企業に対する考えを叩き込まれたような気がします。


 初めの頃に、銀行の与信判断にコンピュータ審査を導入するプロジェクトに関わりました。倒産確率を活用するシステムで、過去のデータを入れてみると、人間が審査したよりも機械が審査したほうが正確で、驚いたりもしました。その後しばらくして、その銀行が貸し出し審査にコンピュータを導入しますというニュースを見て、提案内容が実現したという実感を持てました。 そのあと、大手商社の多岐に渡る事業を定量的な経営指標で判断して、事業の選択と集中を実現化するプロジェクトを1年間ほど担当しました。その会社が上手に市場にメッセージを伝え、計画を実行に移した結果、株価が一時、他の競合する商社の株価を抜くほどに上昇するという成果がでました。商社でこのようなことをするときに、自動車や、不動産、鉄鋼、経理など色々な部門の方々が、様々な意見を述べられます。その中で、『このような考えでやります』という正しいと思うこと示して、それぞれの人たちを説得していくことや、会議をどうファシリテートしていくかということを学びました。その裏では、アナリスト的な立場で血のにじむような分析活動が必要であったということがありますね。1日16時間働くのが週5日で80時間、週末も10時間ずつ、合計で1週間に100時間働く・・・。それがしばらく続きましたが、さすがに36、7歳の頃でしたので、このようなワークロードを続けるには限界があり、体力勝負はきついな、と痛感しました。でも、このような地道な活動は大切ですよね。苦しい経験を越えると、一皮むけて大抵のことに驚かなくなっていきます。 そして、後半はM&Aを経験することになります。日本の自動車メーカーでの話になりますが、当時、自動車業界ではグローバルに再編の嵐が吹き荒れていました。この会社もその波に飲み込まれ、基本戦略を練り直す過程で、コンサル社内の自動車事業部門と僕たちM&A取引をリードする部門とが一緒になって取り組みました。最終的には、大手のグローバルなメーカーと資本・業務提携することを提案し、資本構成や提携後の会社のポジションなど、いくつか譲れないと思われるポイントも提示しました。投資銀行を選んだり、相手側の投資銀行と議論したりする中で、当初目標としていた通りの条件で提携を実現することができました。 その翌年は、地方に拠点を置く化学品メーカーと欧州の大手同業者との合弁設立の支援を行いました。こちらも、自動車会社のときと同様、難しい案件だったのですが、結果うまく合意に至ることができました。 どちらの案件に関しても、M&Aを切り口に、会社のトップは何を考えているのか、そのためには何をしなければいけないのか、と考えながら仕事をさせてもらったのがコンサルタントとして得た大きな経験でした。


 論理上正しいことは誰でも言えるのだと思います。それをある程度現実的に落とし込むには、受ける側の人が納得して行動しなければならない。その背中の後押しをしてあげるにはどうしたらいいんだろう・・・と考えていました。それは、システムを入れたときもM&Aを支援したときでも同じで、戦略を語るだけではなく、実際にコンサルの受け手側の人が動いて、結果が出るよう支援することを心掛けていました。


 正しい組み合わせを考える上で、社内外の意見をよく聞き、それが戦略上正しいかという判断をしたり、実現するためのアイディアを出したりという、戦略を練るスキルが、まず、挙げられます。CFOとして基本的に必要なスキルではないのでしょうか。もちろん、業界に深い造詣のあるCEOと一緒に戦略を立てるということが大切で、この部分は営業部門や開発部門など、さまざまな人の意見を聞いて、判断してアドバイスする必要があります。加えて、それを財務的な言語なり指標なりで裏打ちするスキルも、もちろん不可欠です。ですから、個人的な意見になりますが、CFOは財務的な側面と、これは従来あまり脚光を浴びていませんが、経営企画的な側面の両方のスキルを持っていることが必要だと思います。


 それまで勤めてきた銀行もコンサルも、お金を貸したり助言するという意味においては自ら手を下さない、言い換えれば結果責任を負わない仕事ですが、グローバルダイニングは実業です。実際に売り上げを伸ばし、利益を増やさねばならないのです。しかも、今度はお金を『貸す側から借りる側』へ変わりました。 今までお金を貸すという立場でしか会社を見ていなかったのが、今度は銀行からいかに安くお金を借りるか、いかに株を高く買ってもらうか、そのために何をすればよいのか、ということを考えることができました。それから、IRを担当するというのも初めての経験だったので面白かったですね。 また、現場での働きと数字をどう結びつけるかを考えるのもよい経験でした。できる店長が燃え尽きてしまうことを防ぐために、ブランド別に疑似本部制を敷き、本部長的なポジションを用意するということもやりました。また、教育制度を充実させるべく、現場での研修を行うきっかけ作りも印象深いことです。


 企業再生といっても、計画を作り、売り上げを伸ばして利益を上げるという、CFOとしての役割は同じです。民事再生のケースでは、働いている人たちは、会社の倒産というのを一度経験しているので、今までのやり方が違っていたことに気づいています。ですから『こんな計画でいこう』という提案は受け入れやすいのです。ところが、50年の歴史がある上場会社だったので、幹部の皆さんが僕より年上。言われていることは分かっているけれど、体がついてこない・・・。幹部の方々は長年やってきた仕事のやり方を急には変えられないわけです。しかも、自分で考えて行動するということがなかなか難しい。やれと言われてやったことは、結果が出ないときは指示が悪いという言い訳ができるのですが、自ら考えて行動を起こす時にはそうした言い訳ができない。よって、なかなか我々が思う通りのスピードでは変わっていかない。企業再生に携わっているみなさんは、そこが大変だと思います。投資ファンドや経営コンサルの立場で、どうやれば建て直しができるかという絵は描けるのですが、実際に自分ひとりでできることには限界があります。真の再生を目指すのであれば、働いている社員一人一人がまずは自立し、次に自律的に動ける仕組みを手当てすることが重要だと思いますが、なかなかそうはならないという経験をしましたね。


 まずはコミュニケーションです。人により、考え方は様々だと思いますが、自分の場合は、自らもオープンでいなければならないと考えていましたし、相手のことをできるだけ知ろうと思いました。どうしてこの人は動かないのだろう、どんな仕組みであれば動くのだろうと考えないといけない。もちろん、状況によっては周りの方々が非常にリテラシーの高い人たちばかりで、新たな切り口を示すだけで動き出すこともあるかと思います。しかし、企業再生は少し事情が異なります。経営コンサルの人は怒るかもしれないですが、極端な話、戦略はお金を出せば買えますし、正しい戦略を手に入れる時間も短縮できます。しかし、大切なのは、その正しさを自らの言葉で伝えて、いかに社員たちの気持ちを変え、行動を促し、結果を出していくかです。


 これまで、銀行やコンサルで資金や助言を提供するということをしてきました。その後、上場企業、ベンチャー企業にもいましたし、企業再生も経験してきました。現在は、今までの業種と異なる会社で、事業承継でいかにビジネスを伸ばすかという新しいチャレンジをしています。一度経験した職種・仕事は、なるべく二度は経験したくないという考えで、これまで進んできました。次は受動的な立場ではなくて、能動的に自分から何かできればと思っています。これができないと、一度経験したことをもう一度やることになり、信条に反するぞ、と自分にプレッシャーをかけているのですが、どうなるのでしょうか。不安ですが前に進むしかありませんね・・・。