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■プロフィール
1955年生まれ。専修大学経済学部卒業。公認会計士。1979年クーパース アンド ライブランド入社。1984年1月から1年間イギリスへ語学留学。1985年ICI ジャパン株式会社に入社し、東京本社、茨城工場、イギリス本社で従事。1993年アムジェン株式会社に入社。財務・法務部長として活躍する。2002年には、現在も続ける吉村公認会計士事務所を開業。同時期、有限会社東京ビジネスサポートのメンバーとして、日本国内で会社設立後間もない会社の援助を目的とした、管理本部機能のアウトソーシングを請け負う。2003年株式会社ゴーセンのCFOとして就任し、再生業務を行う。2007年11月より大興製紙株式会社のCFOに就任。


 はじめに勤務した東京本社では、公認会計士として大学卒業後いきなり大企業を上から(最終アウトプットである財務諸表から)見てきたのに対し、下から会社を見てみたいという考えから、はじめの3年間ほど、新入社員がやるようなことも含め経理全般を全部一通り経験させていただきました。これは、上から企業を見ていくという公認会計士の仕事と違い、本来の実務を知るという点で本当に良い経験でした。この経験で順番は逆でしたが、CFOとして全体を統括しながらも細部にも気配りが出来るという技能を身につけることができ、現在の私の仕事のスタイルの原点ともなっています。
ICIジャパンで一番印象に残っているのは、心から尊敬できる上司と出会えたことでしょうか。CFOをされていましたが特に資格があるわけでもなく財務の実務能力がどれだけあるか不明でした。しかしながら、仕事のみならず様々な相談をしても、的確に答えていただけるし、私から見れば本当に博学で、学者肌でありながら気さくな方でした。財務を簿記技能の集積ではなく、数字の背景を読み、戦略を考え、将来リスクを予想して事前に手を打って行くという、知的な職務として考えられるようになったのはこの上司と巡り会えたからこそと思っています。彼の下で働いたことで、こういう上司になれたら素晴らしいなと尊敬できる方でした。


 小さなバイオベンチャーでしたので、経理の基本的な業務、たとえば銀行で社員の給料の振込みをする、コンピューターソフトの経理システムで伝票を作る、といったことから、ベンチャーキャピタルとの間で色々と議論をして、資本政策、資金調達を実行するということまで幅広く担当しました。他には人事、株主総会、展示会の資料作りなど、総務・人事・IRなどの全般を行いました。
 ちなみに、今デルタウィンCFOパートナーズには「ベンチャーCFOクラブ」というものがありますが、ベンチャーという組織では全てを要求される分、全てが学べる場所だと思います。勉強のためにベンチャー勤務というのは本末転倒ですが、本当にベンチャー企業のために役立とうと思ってくる人には、頑張った分にプレミアムがついて勉強になる場所だと思います。


 バイオの会社なので、日常的に医薬品の基礎研究に従事されている大学の先生方とお話できるなど、アカデミックな方とお付き合ができたことは良かったですね。また、自分は科学者でもなければ、医者でもないですが、人の命を救うということを社是としている会社に身を置けたことは素晴らしいことでした。また先ほども申し上げましたが、会社としては裁判で戦うという不本意な環境でしたが、財務という専門分野以外の特許、知的財産、またはライセンシング等の知識・経験を積めたことは個人的には非常に良かったと思っております。


 ゴーセンは、合成ガット、ラケット、釣糸や産業用縫糸の製造を行う会社で、50年間続くオーナー会社。ここでは様々なはじめての経験をさせていただきました。企業再生という仕事もそうですし、外資系ではなく日本の会社に勤めるということもはじめて、大阪という土地もはじめてですから。オーナー会社というのは、属人的で1つのことをずっと続けて変化を好まない部分があります。ある経理担当者は、入社して4、5年くらいの社員がやる仕事をもう20年近くもやり続けていたり・・・。でも給料は徐々に上がっていくので、年齢と給料とやっている仕事が全く合わないということが非常に多くありました。個人主義、同族的経営、村社会といった企業文化を変えていくことが、企業再生の中で大変な部分でした。若い社員たちは問題意識を持ってはいるのですが、指示が無いということだけで誰も行動を起こさないし、誰も聞いてくれないという思いがあったのです。私が入って、随分前に作られた就業規則や旅費規程をひとつひとつ地道に改善し、また大阪支店、工場、営業所とバラバラだった経理システムを整えました。最終的には、なんとか立て直しがうまくいって3年半かけて、日本毛織株式会社のグループ会社に入ることができました。


 ゴーセンでの仕事で忘れられないのは、ホクレンという子会社の再生。ホクレンは染色という業種から収益性が低く、創業以来45年の間赤字体質から抜けられず、債務超過になってしまったんです。そこで、ホクレン再生計画を作って、最初にやった事は30人ぐらいの社員全員と面談をして、社員全員に退職金の放棄を合意してもらいました。これで債務超過と短期的な資金繰り難を解消し、その他組織の変更、人材の投入、新たな業務分野への進出、染色ミスの撲滅プロジェクト等考えられる限りの業務改善の断行いたしました。その結果、月次で一旦黒字化となると全員の指揮が上がり、今まで赤字が常識であった夏場の閑散時期も黒字が続き、45年の歴史の中ではじめて、12ヶ月連続黒字を達成しました。直後に日本毛織株式会社のDDがあったときに、同じ染色工場を持つ同社の工場長を経験されたDD責任者の方からホクレン工場は非常にきれいであり従業員の皆さんが元気がいいのには感心したと評価されていたという事を伝え聞きました。従業員の皆さんには退職金の放棄という辛い決断もお願いしたにも拘らずここまで協力していただいた事を思うと本当に感動いたしました。


 コミュニケーションですね。現場に行った際は、アルバイト・パートさんにも声をかけて話す機会を作りました。それを続けていたら、全体集会をやっていると現場の女性社員が「こういうことをやったらもっと経費が安くなりますよ」と提案してくるんですよね。それまで人前で発言することの無い人が、発表できるようになるなんて、画期的なこと。利益が出た喜びで、コスト意識が芽生えたわけです。


 直面した問題に、「自分で勉強して自分で考えて、自分で結論を出す」ということを地道にやっていくということが大切だと思います。あとは、プロアクディブといいますか、特に将来発生することが予見できる事柄には事前に準備しておけば後は突発的な事象に対処するだけという“余裕”が出来ます。例えば、決算時期は忙しいとよく言われますが、決算があるのは前から分かっているのだから、事前に対処ができることが一杯あるはずなんです。ゴーセンでは最後は消費税と国税の計算を除いて毎月決算作業を出来るようになり、3月の本決算のときも5月の連休はみんなしっかり休みを取れるようになりました。以前は6月末ぎりぎりまで掛かっていた事を考えると覚醒の感があります。逆算の世界ですね。現在の結果は過去に行った事が原因となっているのと同じように、未来にある結果がほしいのであれば、今何をやらなければならないかを逆算して考えるわけですね。数字の世界だけの話でありませんが、あるべきものが無くなったり、無かった事が新たに生じて来ると表面的に目立つので誰でも注意しますが、例えば無くなるべきものが変わらない場合に、そこに気が付くかどうかはプロアクティブの思考がないと対応できないと思います。