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■プロフィール
1959年生まれ。上智大学法学部法律学科卒業、スタンフォード大学院経営大学院MBA課程卒業。MBAをはじめCMA、CPA、CFM、CIAの資格を保有。1982年富士通株式会社に入社、1985年富士通アメリカに出向。スタンフォード大学院経営大学院MBA課程入学のため退社、1990年株式会社コーポレイト・ディレクションに入社。1991年米国インテルの日本法人・インテル株式会社に予算管理部長として入社、1994年経理部長を経て、1997年経理・予算管理を統括するコントローラに就任。2000年米国インテル本社に出向し、日本人で初めて製品事業部のコントローラに就任。2002年日本人で初めてインテル日本法人の管理・経理・財務を統括するコントローラとしてインテル株式会社に帰任。2005年3月株式会社ディーアンドエムホールディングスのCFOに就任、現在に至る。


 職業人としてそれなりのものになりたい、という希望はありましたが、20代の頃は自分が何になりたいか、というのは分かっていませんでした。ただ、少なくとも今何をしたらいいのかという問題意識は常に持っていました。20代の最後にMBAをとった後、経営コンサルタントの会社に入社しましたが、その経験から自分が持っているスキルなり、経験なりを積み重ねて勝負できるようになろうと考え始めました。キャリアには、勉強で学ぶことができるスキル、仕事で積み上げていく経験が必要です。だから、1年後、5年後、10年後と自分の経験が積み上げられる仕事を意識的にやらなければと思っていました。


 そうですね。経営コンサルティングの会社に入って、思い描いていた仕事内容と違っていたので、そこから自分の本当にやりたいことを考え始めました。30歳位まではそれでもいいと思うんですよ。ただ、どこかで勝負しないとね。天性だけで勝負できるのは野球やサッカー選手ぐらい。自分が勝負すべき場所、企業戦略で言うと「ドメイン」って言いますが、経営コンサルティングの会社では自分の「ドメイン」を考える貴重な機会を戴きました。

 それから、勉強は非常に大事です。私はファイナンスの道を選びましたが、それはファイナンスが専門職であり、会計や財務、税務などを勉強することで他の人と差別化できるからです。私の過去15年間は経験として意味のある仕事をし、自分のやりたいものができるようになるためのベースになったと思います。


 ファイナンスという仕事の頂点はCFOですが、この仕事は様々なことを勉強する必要があります。ですが、それ以上に「ビジネス・パートナーシップ」つまり、自分の所属しているファイナンスという組織をどのように企業の発展にパートナーとして貢献させるかが大事なのです。そのために必要な企業の戦略、会計、企業財務、マーケティングなどを幅広く勉強する機会を与えてくれたのがビジネススクールでした。

 企業にも戦略があるように、個人にも戦略が必要です。戦略は最初から決まっているわけでなく、1日1日に戦略を考えるチャンスがあるし、それは環境の変化と共に変わっていきます。運命というのは戦略の結果ですが、戦略をもつことで運命を変えられるわけです。1年後2年後、自分が何をできるかを考えて、その中でいくつかあるオプションから一番良いものを選択する作業は毎日できます。それはただ運命に流されていくのとは違います。MBAで学んだ戦略的な考え方は自分のキャリアを考える上でも、役に立っています。


  はい。元来、資格をとるのは苦手です。でも、ファイナンスの世界で勝負していこうと決めた時、スキルを得る為の勉強を自分に課す手段として取得しました。ただ、資格試験のような形で勉強することもいいのですが、一人で勉強していると分からない分野も出てきます。特に、金融分野は独学が難しい面がありますので、2回目のMBAとして一橋大学の金融戦略専攻コースに通っています。


 14年間の勤務のうち、2年はノートブックPC用のCPUを開発する事業部のコントローラに就任しました。2000年にITバブルがはじけ、新製品の開発は進めながらも、全体として事業縮小になりました。一番難しかったのは人員削減という決定に事業部長を至らせるまでのプロセスで、決して楽しい経験ではありませんでした。コントローラの仕事は株主の利益を守る為に会社で正しい決定がされるように調整する仕事です。数字で事業の状況を見えるようにして、ビジネス・パートナーとして痛みの伴う決定へ導きました。結果的にはこの製品事業部はノートブックPC用のCPU「セントリーノ」を2003年に発表し、インテルの近年の利益の多くはこの製品から出ています。


 一つ目は、「コーポレートガバナンス」の部分です。今、取締役会が機能していることや、監査を請け負う外部の監査法人がしっかりしていることなどがコンプライアンスの課題としてしばしば議論されています。私にはこれらは重要だけれども、二次的な要因に思えます。企業の中にあるファイナンスという組織や、そのトップであるCFOが、株主のために企業の内部で正しい決定がされるように責任を持って執行することが、コンプライアンスの課題の最初に議論されるべきことだと考えています。強調してもし過ぎないのは、CFOは株主の利益を守るという点で社内で一番重い責任を負っており、内側から会社をしっかり見る人間がいなければ、どんなにきれいごとをいっても会社のコンプライアンスは守られないということです。

 もう一つは、企業価値をあげるためにファイナンス部門ができること、それが「ビジネス・パートナーシップ」です。ファイナンス部門は、単にコンプライアンスの見張り役でなく、企業の成功に貢献しなければ存在価値はありません。CFOはCEOのビジネス・パートナーとして企業が競争に勝つための戦略を構築し、戦略の遂行に貢献しなければなりません。今年の5月にダイヤモンド社からインテルの戦略が如何に形成されてきたかという戦略論の本の日本語訳を出版します。そこでは、インテルにおいてコントローラがビジネス・パートナーとしてどのような役割を果たしているかが活写されています。是非、参考にして戴ければと思います。


 非常に面白い会社です。デノン、マランツ、マッキントッシュという高級オーディオ製品のブランドからなる「コングロマリット」です。しかし同業界の企業の集まりなので、ブランド間のシナジーを発展させるために、いろいろな仕掛けができます。また事業ポートフォリオに関しては、見込みの無い事業から撤退し、新しい事業を企業買収することができます。2005年の3月に入社以来、成績不振のMP3プレーヤー事業からリオを撤退させ、ナスダック公開企業でスピーカ事業をしているボストン・アコースティックを企業買収しました。売上高営業利益率10%達成の企業ビジョンに向けて、CFOがビジネス・パートナーとして貢献できることがたくさんある会社です。


 CFOになるためには、スキルという面では自分が勉強すれば良いのですが、経験は簡単に積めません。特にコントローラの経験を得るには、ある程度の時間がかかります。外資系の日本法人で事業計画もしくは予算担当のマネジャーの職務を経験することは、CFOを目指すのであれば、非常に有益であると思います。ファイナンス部門がビジネス・パートナーであることを大切にする組織で働くことは、将来につながる良い経験になるでしょう。